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STORY1
ねぇねぇ、肉体が無くなるってどんな感じ? 怖いのかな…?
どうなっちゃうんだろう?
私は、クローンだから解らないけど、光太はそれが解るんだよね?
この鼻にかぶる匂いにも大分慣れた。
少し頭に靄がかかったような感覚に陥り、空を見上げられなくなる。
現実のようで、現実でないこの世界。
―そう此処はストレージの中―
リアルの世界に来るのは今では当たり前で、地球では人が街を歩いている事は珍しくなった。リアルをコピーし、それを又コピーする。コピーはコピーの意思で歳をとり、進化し学習する事も出来る。勿論、歳をとらない事も可能である。様々な年齢、体格のコピーが仮想空間を歩きまわり、いくつもの生、時代を楽しめる事となる。
異様な空気が仮想世界を覆い尽くし、世界は歪み、狂った音が世界を支配する。
澄んだ色だったはずの現実世界は今では、灰色に染まり、人々はベッドに横になって目を瞑ってしまう時代になってしまった。街から人の姿が消えてしまった。
これも、ストレージの大幅な復旧によっての事。
それ故に、仮想空間には生まれる事は出来るが【死】という事柄が無くなってしまった。人々は不老不死を手にした。
心が腐ってどろどろとしたものが、人々の脳内を汚染してゆく。否、人というよりゾンビか。
死をなんだと思っているのか?
最初は、可愛らしいものだったろう…
だけど、それは日増しに加速してゆき、より刺激的なものとなった。奴らは、絶対的に死に至りしめる娯楽をみつけてしまった。
それに参加し、負けた者は必ず死ぬというデットレースを生み出した。
俺は、基底世界でそれを知り、レースと呼ばれる最悪的な行為を止めるため、この世界に飛び込んだ。
それも、もっとも有利な電脳直結でレースに挑むという事を…。 薄暗く濁った闇の中に潜り込み、レースの模様を今日もハックし、この世界の波に乗る―。
何度もレースに出たけど、負けて死んでいく奴らが悲しいなんて思った事は一度もない。
一度も負けた事が無く天狗になっているってわけじゃない。 何でも使いすぎると駄目になるって言うけど、それは本当で、コピーされたものの脳の動きは基底現実より遥かに柔軟になりすぎて麻痺している。
人を殺して悠々と存在し、誇らしげに手を掲げている。
仲間が死んでも逆効果。
生というものが、どれだけ儚いものなのかと言う事にまったく気がつかないし、逆に楽しんでいる。 一人になるって言う事が。どれだけ寂しくて辛いか解っているのか?
負けた奴の体はバックアップをしていない限り、焼け堕ちて死んでいく。最後に残るのは小さな炭だけ。 ぱさぱさと軽い音を立ててさっきまで自由に動き回っていたものとは思えない姿に変化する。 自由だったのか、狂っていたのか…
でも俺は、やってやる。肉体的死がない奴らはゾンビと一緒。それに、ゾンビと戦って負けるなんて、できっかよ。 こちとら優良不良人間だぜ!