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STORY9
「カモ博士?こっちはいつでもいけるぜ!」
トランシーバーから返ってくる声をいち早く聞き取る為に、イヤフォンの角度を調整する。
「そんな事せんでも聞こえるわい!ワシの発明したものを疑うでない!」
「あ?カモ博士?」
「ワシしか出んじゃろが!」
「ごめん。つい癖で」
この無線は俺とカモ博士だけが繋がる特殊なものだ。これも博士の発明品。
ゾンビ共にもハックされない特殊の特殊回線!見た目は、一般の物と何ら変わりはないのだけど一緒の扱いをすると、すぐキレる。
それに、俺の様子はモニターから見えているから困りもの。まぁ、見えてなきゃバックアップしずらいんだけど。
「光太、路肩にあるごみ箱の横にマシンをセットせい」
「了解!」
赤錆びのかかった四角く、三・四人入れそうなごみ箱の横までマシンを移動させる。
「ポジションに入ったらタイヤがロックされるからの」
「オッケー」
俺はポジショニングされる場所を探す。 だけど、暗くて地面がよく見えねぇ…。 コンクリートの上に砂利が被っているせいで 足先で蹴ってみたり、こづいてみたり…。
「あ・…」
一度出しかけた言葉を飲み込んで大きく深呼吸をした。嫌な予感がしたから… それはきっと大正解だろう。
完璧主義者で追及者な彼はポジションを作った後、又元通りに、それも前よりも完璧に元に戻したのだろう。
俺が口を開くのを渋っているのに気づいた博士がようやく気を利かせてくれた。
「すまん!すまん!今光らせてやる」
その瞬間LEDライトが発光した。
「初めからそうしてくれよ…」
ライトの上にマシンをセットすると、タイヤが固定され細かい粒子の煙が出てきた。
「カモ博士?何この演出?もしかして雰囲気作りじゃないよね?」
呆れた溜息が向こう側から聞こえたのではずれだった事を知る。
そして、一瞬静けさが通り過ぎカモ博士が緩んだ空気を絞めてくれた。
「鳥は自由に空を飛び青を駆ける。光太、今日のワシの思考についてこれるか?」
「あったりまえだろ!」
博士は、鼻で笑ってこう言った。
「今日の舞台はディストレスじゃ」
「はぁ!?」
俺はそれを聞いて思わず素っ頓狂な声が出てしまった。何故なら一番重たいレースって事だから…。俺、軽やかに走りたかった。 それなのに博士はスタートを即す。
「ぐずぐずしとれんからの!」
博士はハックの道を開けるプログラムを作動させた。 ノイズが何度も繰り返され、うねるような旋律が奏でられてきたら二度目のスタートの合図だ。
Break GO!
イヤフォンから低い声で合図が出される。
これ聞くと肩ががっくりと落ち込んでいても、すっげーやる気がでる。俺は、ゆっくりと目を瞑り情報が流れ込むのを待つ。
博士の設置した場所から今日のゾンビ共のデータを高速に脳に送り込み相手を不安や極度のストレスを与えスピンアウトさせる。
それが今日のレースだ。
外的負傷はだしたくないから。
全ての準備が完了し目を開けると、目の前に広がるのは真っ暗な世界。俺の脳には奴らの思いでの場所が次々と溢れ出す。
それを逆手にとって俺は勝負をしかける。
思い出の記憶をコースに作りかえ走るのだ。
光が段々と小さな粒になれば俺の勝ち。
地面に映る光はスピードをあげる事に二次元の光の世界から無次元の世界へと加速する。
流れる星を掴む様になめらかに。
雨の降る日は、雨粒を指先に乗せ転がす余裕も持ち合わせ、水たまりが歪むその前にマシンは通り過ぎる。
「一人目発見っと」
人物を直接攻撃するのではなく、マシンの細部やこの世界のデータの中に入り込む。 ゆっくりと、なめらかに…
時には膿を抉るように強く。
俺は、リアルを今を生きてく。